ディア・ウエンディ
ラース・フォン・トリアー脚本でトーマス・ヴィンターベア監督のこの作品は、劇場で見る機会がなく、DVDでようやく見られた。
アメリカン・ニューシネマ=アメニューについて、しばらく書いていなかったのだけれど、この2005年の作品が、まさしくアメニューだったので、紹介。
アメニューといっても、そのものではなく、いわばオマージュ作品。
現代のアメリカの炭坑町を舞台にしているのだけれど、主人公たちのクラシックガンの秘密愛好グループのファッションはサイケデリック。
風貌も明らかにジムモリソンだったり、ジムヘンだったり。
そのグループ名は「ダンディーズ」で挿入歌は「ゾンビーズ」。
それが最後には警官隊の銃撃で玉砕するというストーリーは、アメニューの定番。
ストーリーの背景には、バリー・グラスナーの『アメリカは恐怖に踊る』という本をイメージさせる、
いつもびくびくするアメリカ人、だからすぐに発砲するのだ、という主張を引用しているようにも感じられるが、
トリアーがいうように、これは銃規制運動とは無関係だというのは、ほんとうだろう。
そのような枠にくくられたくないという気持ちはよくわかる。
トリアーはドグマ95という映画運動を展開していた。
スタジオは使わない、自然光を重視する、回想シーンなども御法度という、
ハリウッドSFX路線の対極を意識した運動だったけれど、
監督のヴィンターベアはその弟分的存在だった。
もちろんこの作品はドグマ95からは外れている。
その運動ではストーリーに武器や殺人はルール違反だったのだから。
10年ほど前、そのヴィンターベアに話をきいたことがあった。
彼はコミューンに育ったそうだ。
あのビッグチル世代へのオマージュ作品を息子の世代が撮るというのも、時の流れかなあ。
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