吉行淳之介とワイングラス
ワイングラスをどう持つかということは、たいした問題ではないのだけれど、最近では、なんだかヘンな持ち方の人が増えた。
脚を支える丸く平べったい底を親指と人差し指ではさんで持ちあげる。
こういうのを食堂で見せられると興ざめする。
卓がない葡萄酒倉庫で味見する業者を気取っているのか、まねているのか、あれは職人の飲み方で客の飲み方ではないなあ。
脚の部分をつまんで持ちあげるのもいいけれど、でも、手元がふらついてこぼしそう。
これが「正しい」らしいということで、たいていこの持ち方。
胴の部分に指をかけてダイナミックに飲む、というのがやっぱり嫌みがないか。
指の温度が葡萄酒に、というようなこと、気にしない。
フランス人だってふつうは、そんなものだ。
統計的には知らないが。
それから、卓でスワーリングというか、攪拌ですな、あれをやるのも、俗っぽい。
ブランデーグラスの攪拌も、やっぱり俗っぽい。
かつての二時間ドラマで、始まって5分で殺されてしまう金持ちのイメージ。
ロッキングチェアと葉巻とガウン?
で、ああ、これは工夫があるなあ、と思ったのは、
故・吉行淳之介さん。
脚と胴のちょうどつなぎ目あたりに親指と人差し指と中指をあてがって持ちあげる。
それぞれの指の伸ばしかげんが「見せ所」。
あれは俗っぽくもなく、かといって嫌みでもなく、そうとう高級なワインを気取った店で飲むときも通用する。
それが自然な閾に達するのは、やっぱり熟練がいるのだろうなあ。
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