航空写真のホラー
まえにもダイアリーで書いた畠山直哉。
この人の「東京/森ビル(2003年)」という作品がある。
航空写真で港区から渋谷区、目黒区の一部まで鳥瞰できる。
このポスターを買って、しばらくぶりに眺めた。
かつて住んでいた恵比寿の集合住宅を見つけようと天眼鏡でのぞいた。
わからなかった。探すうちに、背筋が寒くなった。
この写真、実は模型を撮ったものに過ぎないのではないかと感じたからだ。
そんなはずはない。
地図どおりで、高速道路には小さな車の列、さらに、ビルの数は数千におよぶ。しかもきわめて精巧だ。
公園に緑があり、ビル屋上も、くすんだリアリズムがある。
が、小一時間も見ていると、ある発見をした。
五ミリほどにしかみえないビル、7、8階建ての恵比寿三丁目のビルの一つが傾いて隣によりかかっているのだ。
まるで阪神淡路の震災のときのように。
そういえば、ところどころ道路の白線がみえない。
それでも、これが模型だと断言できないでいる。
それほど精密なのだ。
でも、これが航空写真だとすると、ではあの傾いたビルは?
わからない。
光をレンズに通し化学変化を起こさせ、それを再生するとき、
どこかで、何かの力が働き、ほんの一部に、冗談のような変更をくわえる。
そういうことがあるのかもしれない。
これがほんとうの風景を写しとったものだとすると、それはかなり怖い。ホラーである。
また、これが模型だとすると、いったいなぜこんな手のこんだものをつくるのかと、それもまた怖い。
未だ真贋は謎。
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