ぽっくりと、人類
以前、あるシンポジウムで「人はだんだん老化するのではなく、突然、老化するのだ」というようなことを発言したことがある。
身体というものは徐々に変容していくものではなく、一つのきっかけで、一気に変わる。老化も同じで、ゆっくりと老いるということは案外少なく、一つの病、けがで一気に老いる。
地球温暖化が進んでいるらしい。進んでいると断言できるほどの実感はない。が、どうも、かつての夏、30度を超えることが少なかったような夏、これを知っている身としては、たしかに温暖化しているのだろうと思えなくはない。これは、牛の歩みのようにゆっくりとした老化のような、温暖化なのかもしれない。それとは気づかないうちに老いさらばえ、臨終するようないわば「幸福」な温暖化である。
が、この幸福は幻想かもしれない。人の死のように、それは唐突に訪れるもののような気がするからだ。ある年に、突然発生する未曾有の温暖化現象、これがリアリズムかもしれない。人がぽっくり死ぬように、温暖化で人類もぽっくり死ぬ。じわじわと地球温暖化が進み、人類に死が忍び寄るという現在のシナリオさえ、楽天的すぎるのかもと思う。物事には、自然界と人間社会の運動には臨界点、閾値というものがある。それがいつなのかみんな知らないだけなのだ。そもそも人類は、類として、動物学的にはもう終わりらしいじゃないか。高等な動物はいつかは滅ぶ。
というふに考えると、地球温暖化現象のニュースに、いちいち鬱にならなくて、すむだろうか?
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