「思考のショートカット」 (2007.9.20) WEB限定掲載
インタビューなどで一番困るのは
「で、解決策は?」
「この小説でなにがいいたかったのか?」という質問だ。
作家の中には「そういうバカな質問には答えない」と、大胆にいってしまう人もいる。
私は「そうですねえ」などといいながら、答えをなんとか練り上げてしまうのだが、後で後悔する。
たいがい、つまらない答えになるからだ。
本を書くことによって問題提示をする。
処方箋は書かない(わからない)。
そういう本も存在するのだ。
かつてはそういう本が主流だった。
いまはマニュアル全盛だから、本の主流がかわったけれど。
よって「この本には結論がない」などと批判する人がいる。
解決策=結論ではないのだが、どうもこの手の指摘をする人がネット時代になって急に増えた。
ともかく本を読んで「自分で考える」ということをしない人が増えたのだ。
その本を読めば解決策まですべて教えてくれる。
そういう本がいい本で、また、そういう姿勢で読書する。
つまり考えたくないのかもしれない。
思考するプロセスを失っている。
ひどいのはタイトルだけで判断して、批判してしまうことだ。
たまにいる。中身をまったく読んでいないにもかかわらず批判してくるのだから、かなわない。
もっともこういうのは読者だけでなく批評家にもいる。
数年前、ある新聞書評で拙著を批評した著名な医師は、あきらかに誤読、小見出しだけで判断し原稿を書き、内容とは違う批判を展開していた。
思考のショートカットはいたるところに蔓延している。
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