土豚とライオン
土豚という動物がいる。
アフリカ南部に生息するアリクイのような生き物。
近縁種がまったくいないという珍しいもの。
その死骸解剖を見学した。
東大の研究室の扉を開けると、生臭い臭いが漂っている。
死骸は内臓が抜かれて、首もなかった。
首はどこかほかの研究室にもっていかれたという。
奇妙なのは腕。
1メートルを超える体長にもかかわらず、土を掘って穴に潜りこむ。
そのため前足が発達していて、指とツメも異様に長い。
しかもモグラのように変形している。
映画エイリアンを思わせる。
持ち上げてみると、その腕(前足か)はずっしりと重かった。
その隣ではライオンの前足が解剖されていた。
大きな肉球がはがれてピンク色の肉が見える。
研究はスピードと腕力を支える筋肉とか。
機能美があるというが、私には生々しさが先にくる。
デジカメに納めたがさすがにお見せできない。
こうした解剖は産学協同歩調の大学にあって、消滅寸前だとか。
むしろ分子生物学という遺伝情報学に駆逐されつつある。
モノではなく情報優先は学問分野でも進んでいる。
骨と筋肉を眺め、あれこれ思考思索する研究態度は古い! ということらしい。
思索から情報検索へと、バカげた社会がやってきた。
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