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2008年7月28日 (月)

「親を殺した子供たち」 (2008.7.28) WEB限定掲載

 『親を殺した子供たち』という本がある。エリオット・レイトンという社会人類学者が書いたもので、その冒頭には1988年に東京で起こった事件を紹介し ている。
 14才の名門私立中学の生徒が両親と祖母を殺害し、その後、家でシャワーを浴びて南野陽子のビデオを見たりした後、友人に電話で「親を殺した」と電話し ている。
 当時は有名だったあの事件も、いまではほとんど忘れられてしまった。
 アメリカでは銃器による家族殺人が当然のこと多く、日本よりも被害が拡大する傾向にある。
 この本の中で紹介されている15才の少年は「この革命にみんなが参加して、親を殺すようになればいいと思う」と述べている。
 ついこの間も女子中学生が父親を殺すという事件があった。
 実は未成年の親殺しというのは毎年、何件か発生していて、ことに珍しいというわけではない。
 この間の「通り魔」殺人事件では、書店員を刺し殺して「親を困らせてやろうと思った」と供述しているらしい。
 親との葛藤が背景にあるのか?
 レイトンの著書では、親殺しの背景に中流家庭の上昇志向があり、それが強いほど、このような不可解な事件が起こるという。
 子による家庭内暴力が社会問題になったのは80年代の半ば。それが沈静して、一気に殺人にまで発展しているのか。
 パトリック・マグラアの『スパイダー』は母親殺しの小説。一人称で語る主人公が精神を病んでいて、その課程で母親殺人を犯したらしい。
 というのか、真相は最後までわからない。
 真相は最後までわからないというのが、すべての事件に共通することかもしれない。
 精神医学、心理学、はたまた専門外の「識者」の20秒コメントをTVできかされるよりいい。
 創作への態度、方法は「20秒コメントで世界は解読できない」という地点から出発しなければならない、とつくづく思うのだが。

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