まなざしの地獄
元厚生事務次官宅襲撃事件のさなか見田宗介著「まなざしの地獄」が復刻された。
本書は連続射殺事件の永山則夫(すでに死刑執行)についての論考。
永山が集団就職で西村フルーツパーラーに勤めたとき、ちょうど渋谷で「ライフル魔」事件が起こっている。
渋谷銃砲店に立てこもり、19歳の少年と警察との銃撃戦はテレビ中継された。
小学生だったがはっきりと覚えている。
このとき永山も事件を見ていたのかもしれない。
少なくとも銃声は聞いていたはずだ。
同世代の犯行が永山に何かしら影響を与えたのだろうか?
「まなざしの地獄」は他者の視線の脅威、本人の意志とは無関係に社会が規定する人間像について語っているのだが、永山の、一度捨てられた母親への怨念の記述が心に残った。
じつは宮崎事件(宮崎は母の人、父の人と呼んだ)、酒鬼薔薇事件、小学校襲撃の宅間守(すでに死刑執行)、秋葉原無差別殺人事件など、すべて犯行者と親との葛藤があったことが知られている。
最近起こった元事務次官宅襲撃事件の小泉毅はどうだったのか。
報道では愛犬を父親に処分されたともいう。
犯行動機がその犬の死だったというから、父となんらかの葛藤があったとしても不思議ではない気がする。
さらに犯行者たちに共通するのは、その刃が親に直接むかうことなく、ほとんど無関係な他者にむかうところだ。
現代の親子関係としてこうした犯罪を読み解く視点も成立しそうだが。
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