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2009年2月24日 (火)

「ザ・グレート・サスケ事件とYouTube」 (2009.2.24) WEB限定掲載、書き下ろし

 ザ・グレート・サスケが電車のなかでケータイで撮影されたことをきっかけに「暴行」におよんだ。
 こんな報道があった。本人は「肖像権がある」と怒っているらしい。マスク姿を撮られて「肖像権」というのが興味深い。
 素顔の彼を電車のなかで無断で撮られたというのなら怒るのも理解できる。しかし、マスク姿で電車に乗るというのは、まさに広告が乗っているようなもの だ。ここに彼が主張する「肖像権」なるものを認めるのはむりがある。マスク姿ではなくても、たとえば有名タレントが移動中に写真を撮られたからといって、 肖像権を主張しても認められることはまずない。そもそも彼のマスクは日常的な場面での違和感によって広告化されていて、それは彼自身にとっても利益をもた らしていた。肖像権というより、そのマスクが他者によって二次使用されたとき著作権として問題化するということは十分に考えられるのだが。
 さらにいえば、逆に電車のなかでマスク姿の男が存在するということは、他の乗客のなかには恐怖感を抱く者がいても不思議ではない。そのようして、もろも ろの利害関係、人と人との関係のなかで、彼のマスク姿は存在しいるのである。
 いま、フルフェイスのヘルメット姿でコンビニに入っていけば、通報されることもある。では、ザ・グレート・サスケのマスクでコンビニに入っていって強盗 におよんだ事件があった場合、彼はどういうだろうか? 本人ではなく、彼のマスクを模倣しただれかが犯人だ、という主張は、マスクは自分そのもの、皮膚の ようなものという彼の主張は崩壊しないだろうか。
 この事件、顔とアイデンティティについて考えさせられる、「おもしろい」出来事だった。

 しかし、こういうことが起こるのもケータイが一般化したからだ。さらにいえば、ユーチューブ的な社会環境がある。だれしもが人気画像の発信者になること ができる。この間、地下鉄で段ボールでつくったロボット型の着ぐるみ男を目撃した。片割れがムービーで撮影している。この手の画像がユーチューブにはあふ れている。アクセス数という計量化される注目度はわかりやすい。
 いま、ムービーで撮った画像をそのまますぐにユーチューブにアップできる機器が出ている。もちろんアップされるまでにはタイムラグがあるけれど、その根 底にある願望は、リアルタイムでの発表である。かぎりなく放送に近い。やがて不特定多数のものが、リアルタイムでサイトに画像をアップするという時がやっ てくるだろう。
 しかし、そのとき肖像権やら著作権といったものが、どのようにあつかわれ変質していくかはだれにも分からない。

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