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2009年5月26日 (火)

華氏451

トリフォー監督の『華氏451』を見た。今頃。
なにしろ67年公開作品。
映画史に残る名作というほどではないが、映画好きには必見であるということは知っていた。
そのうち見るのだろうくらいの感覚だった。そしたら、いつ録画したのかHDDに入っているのを見つけた。
HDDには、こういう、いつ、なにを収めたのかわからない番組がよく残っている。自分でやったのだが。
そういうのはたいてい洋画。邦画のTV放映される名作は貴重ですぐに見てしまうから。

『華氏451』はブラッドベリー原作。ジュリー・クリスティ出演。これは有名だが、セリフたった二つというちょい役でマーク・レスターが出ているのにはびっくり。あの『メロディー』の子役です。
それよりもっと小さいころだったが、一瞬にして「あっ!」と分かるのはさすが名子役のオーラか。
子役で成功した俳優はたいてい大成しないが、この人もそうらしい。ぜんぜん見ないからねえ。
ペーパームーンのテータム・オニール、禁じられた遊びのジョルジュ・プージュリーもそうか 。でも、彼の相手役のブリジット・フォッセイはそこそこ作品に出ている。ジュリー・ガーランドは大人になってアルコール依存症と自殺未遂の繰り返しで不遇だった。しかし、E.Tのドリュー・バリモアは小学生時代からのアルコール依存症から脱却して大成功という例もある。
「名子役のその後」を網羅した本なんておもしろそうだが、ないのかなあ。

『華氏451』のキャメラはなんとニコラス・ローグだった。
それを知って雪の中を「本の人々」(書物禁止の国家で本を一冊暗記して後世に伝えようという人々)が、本の中身をつぶやきながら行き交うラストシーンの美しさに合点がいった。
そのなかにほんの少し日本語が聞こえてくる。あの書物はなんだろう。わからなかった。もしかすると、何度も聞き直し、ついにつきとめたというマニアがいそうだが。ちょっと無理か。
このラストシーンは、それだけで名画です。
ラストシーンだけを語る本というのもおもしろそう。もうあるか?

彼がのちに監督する、あのぞっとするほど恐ろしい『赤い影』にジュリー・クリスティが主演していたのは、華氏451つながりだったのか。
華氏451では時代を感じさせる膝上5センチのミニ。ちょうどマリー・クワントが世のファッション界を席巻していたころで、公開年の67年にはツイギーが来日している。

音楽はクレジットを見ずともわかる、バーナード・ハーマン。ヒッチコック作品よりハーマン調がほんの少しポップになったりしているけれど、バイオリンの弦のキュ、キュ、キュという鳴きは、ずいしょに。

作品は書物が禁止され、消防士が焚書に走り回るという設定だけど、書物という存在が大きく変質しつつある現代だからこそ、ラストに感動したのか、とも思う。
当時だと、どうしても絵空事、SFという枠に押しこめられるが、本をまったく必要としない大多数と、命がけをそれを守ろうという圧倒的少数派という構図は、21世紀的で胸に迫る。

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