ウィガン波止場への道
ジョージ・オーウェルのノンフィクション三部作のうち、「カタロニア賛歌」「パリ・ロンドン放浪記」はもうずいぶん前に読んだのだが、このあいだ「ウィガン波止場への道」を読んだ。
買ったままずっと棚に眠っていたもの。
オーウェルが列車の窓から一瞬かいま見た貧しい女性の表情。
それを彼は「つぶさに観察することができた」という。
つまった下水を掃除する彼女の内面まで、一瞬して読みとってしまうのだが、たしかにそういう瞬間がある。
バスの車窓から目に入った歩道で信号待ちをする男とか、デパートの食品売り場ですれ違っただけの女とか。
観察者であり当事者であるという身の置き所を、微妙に調整する力、それがノンフィクションの価値を決める。
「蟹工船」もいいけれど、ここは「ウィガン波止場への道」ではないか。
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