「今年一年(2)MUSEとプラスティック・ワールド」 (2009.12.21) WEB限定掲載、書き下ろし
MUSEの「THE RESISTANS」。カバーがいささかサイケデリックだが、中身はなんともバロック的なロック。
クイーンのような、と形容されるようだけど、三人のファッションはあきらかに「今」のフツーだから、スタイル、雰囲気は大きく異なる。
おそらく才能ということでは、相当なものがあるのだろうが、そしてつい聴いてしまう力がそこにはこもっているのだが、しかし、という気にもなる。
「ABSOLUTION」のころのほうが、まだソリッド感があったと思う。が、今年のこれは、ショパンのピアノソナタが入っていたりすると、いやはや。
カーメン・キャバレロでレインコートのキム・ノバクを見ながら聴くのならいいのだが。
たしかにすべてバロックだ。バロックというのはローマカソリックがプロテスタントに対抗するためにつくりあげた、いわばプロパガンダ様式。つまり絶対的
に絢爛豪華で、絶対的に分かりやすいということ。
大衆洗脳的な様式だから、バロック的MUSEが世界で記録的な人気を獲得しても不思議ではない。
そうしたくてもできない五〇万人の音楽家が世界にはいるわけだしね。
しかし、バロックにはデカダンスの臭気がどこかほしい。それがないところが、イバン・イリイチのプラスティック・ワードに引っかけていうと、21世紀の
プラスティック・ワールドを象徴しているような気がします。
で、今年はこれに対抗するようにマイケル・ポープ&ティー・バースの「デ・パピエ」を聴いた。
フランスの無名のユニットのシングル。13年まえの発売。ついにCDがカチカチカチと音をたてて、壊れた。
デモ隊のシュプレヒコールがこだまする、この曲がもう聴けないわけです。
「国籍をよこせ!」というような意味だと思うのだけれど。
それが消えたというとこも、またプラスティック・ワールドの現在かなあ。
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