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2010年3月11日 (木)

「言葉の効き目」 (2010.3.11) WEB限定掲載、書き下ろし

薬に服用時間が提示されているのは、その効果が時間とともに薄れていくからだ。

効果の持続は永遠ではない。
言葉にもこれと似た効き目の時間がある。
一瞬にして効果を現す言葉もあるけれど、案外そういうものは持続しない。すぐに効果を失う。
効き目時間ということでいえば、本が最も長い。この最も長いというのは、すべての本がそうであるというのではなくて、他のジャンル、メディアに比べて相対 的にという意味だ。
つぎは何か。いまや雑誌と単行本の中間地点に位置する新書版とか、ムックのようなものかなあ。
月刊誌がその次か。これも最近は旗色が悪い。そのあとに週刊誌、新聞とくるのだろう。
紙のメディアではわかりやすい。
では、放送はどうか。これは命は短い。そこでくり返しおなじ言葉が反復される。

そうすることで長持ちさせているわけだ。
流行語というのは十中八九、テレビで反復された言葉だ。

そしてツイッターではかれる言葉はどうか。
これは効き目の持続時間というようなものでは、はかられない性質をもった言葉のネットワークだ。
連続的ではない。非連続、断片である。その断片はどこかでひろわれて復活したりもするが、たいていは時間性とは無縁な、つまり持続性のない、成長や発展の ほぼ期待できない言葉である。
時間の経過のなかで層として積みあげられていく言葉ではなく、散乱した破片である。
私たちはその破片を拾ったり、掃き出して捨てたりしながら、ときにパッチワークをつくり、創造のいや想像の代替品としている。
思念や思考はまとまりを欠いた、破片となり、たいていはすぐに消える。

ネット時代が、言葉というものにたいする態度、精神的構えを根本から変えていく。

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