「電子書籍のこれから」 (2010.5.18) WEB限定掲載、書き下ろし
キンドル、ipadなどの電子書籍が話題になっている。
昨年、キンドルが日本で発売されるときにNHKの「視点・論点」でとりあげたが、それから状況が変わったかというと、本質的にはいっしょです。
日本語の書籍に本格的に対応しだしてから大きく変わるだろうが、それまでは地味に展開するだけ。
英語の資料、書籍を常時読む研究者などでは今も有用性があるでしょうが。
電子書籍で一つ勘違いがあるのは、自分の本棚を持ち歩けるという感覚。
本棚はキンドルやipadの一箇所に集められていて、すでに買った本も、そこにいって毎回アクセスしてとりだすという仕組みになっている。本棚を携帯して
いるわけではない。
だから自分の本にしたつもりのオーウェルの「1984年」が著作権問題でいきなりなくなったりする事件が起こる。
そこで問題はその人の読書傾向、どの頁をよく読んだか、ということまでだれかに把握されているということ。
これはマーケティングに利用できるだけでなく、さまざまな政治、思想コントロールの材料にもなる。
思想統制近未来小説「1984年」が消され事件というのは、その意味で象徴的なのかもしれません。
もう一つは書籍そのものがなくなるかというところが焦点。
いずれ大部分、消えていくのは間違いない。百科事典、辞書が本として出ることはもうないだろう。
音楽ソフトがダウンロード主流になったように、これまで書籍化されていた小説などもダウンロードのみということが出てくるだろう。
唯一残っていくのは聖書か?。
大統領就任の宣誓でipadに手を置くというのはブラックユーモアにすぎない。いや、そうなるか?
ただ本というモノの質感は大事で、だからこそipadでは頁をめくるという仮想的質感を演出しているわけです。
ただしいずれ、小学校の教科書も電子書籍化されるのは間違いないので、そうなると、本の質感を知らない世代が出てくる。
こうなると、本は文化財的な存在になるでしょう。
小学校の教育と電子書籍というテーマは大きいのだけれど、まだ議論は見聞きしないなあ。
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