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2011年6月 3日 (金)

政治家という仕事

なんでこんなことばかり続くか、という疑問を持つ人は多いと思う。もちろん、政治の話。

理由は、そもそも国政を目指す政治家(地方議員ではなく)のキャラクターと、その仕事に求められる資質に矛盾があるからだ。

彼らは概して権力、権威が大好きであるし、自分がなにより大好きだ。人一倍、自己中で、それを満足させてくれる、あるいは、くれそうに見えるのが国会議員や大臣という仕事なのだ。

当然、この仕事を求めて集まってくる人々は、そうしたキャラの持ち主が多くなる。いやほとんどだ。過去にこの仕事がむいていないと、選挙に落ちたわけでもないのに辞職した自民党の国会議員もいたけれど、その人はフツーに権力や権威が好きなだけで、人一倍、何が何でもというがむしゃらさがなかったから、内実のくださらな、ストレスにどうにもたえられず、椅子にしがみつくのをやめてしまった。

しかし議員、大臣というのは民の代理でなければならない。それが代理制民主主義。あくまで民のために働くのであって、そのためには自己顕示欲を殺し、私利私欲を捨ててひたすら汗を流す。権力や権威をかさにきてはならない。

つまりそれこそが議員になろうかという人にとって、一番苦手な行為であり、自己のキャラに反することだ。

結果、国会議員という仕事に集まって来る人は、国会議員という仕事に求められているキャラと正反対の人ばかり、ということになる。これは宿命であり、大小はあっても古今東西を問わない。つまり政治家いう職業はこうした存在の矛盾をそもそも抱え込んでいるということになる。

たとえば、かりに警察官という仕事がもとめるキャラが、盗みや暴力欲求を内包した人間であるなら、世の中どうなるか。成り立たないでしょう。

政治家の自己中的行為全開の暴走を唯一、制御できるのが選挙だが、それがいわばメルトダウンしてしまったあとは、もうどうにもならない。四年は我慢し、そしてまた暴走という繰り返しでしかない。

そしてもう一つ、政治家の重要なキャラがある。全員一匹オオカミなのだ。自己中で権力権威が大好きということは、所詮一匹狼で、他人の指示やいうことなどききたくない。そういう人々が政治家である。こういうとオオカミに失礼だけれど、たとえとしてはそういうこと。

他者からの承認と賞賛をだれよりも、自分一人が受けたいというキャラは選挙運動と当選の万歳をみればあきらか、でしょ。

つまり組織に縛られたくないのが政治家である。それがなぜ徒党をくむのか。自己実現の計算のなかで、仕方なく、にちがいない。だから少しの政界状況の変化によって、離合集散をくりかえすことになる。

政界再編などというもっともらしい言葉でくくられるこの二十年のごたごたは、なんのことはない、政治資金の環流システムがくずれ、上意下達、親分子分のヒエラルキーがくずれたからだ。政界再編という動きは自己基盤の安定、上昇を計算しての個々の政治家の「運動」でしかない。政治家の資質が大きく変化、低下したわけではなく、もともとそういう人々が政治家なのです。

ああ、それにしても、目を赤く染め、いまにも涙をながさんばかりにひな壇でうなずいた、あの人の自己陶酔ぶりは、すごい。あれがあるから政治家を辞められないのでしょうか。

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