ガス・ヴァン・サント『永遠の僕たち』
ガス・ヴァン・サントの『永遠の僕たち』を見た。といっても昨年のことだけど。余命いくばくもない女と男(少女と少年といってもいい若い二人だが)の悲恋。うんざりするほど生産されてきたステレオタイプのプロットだが、日本人の特攻隊員のゴーストも現れて、人間関係が奇妙なトライアングルで展開するのが、さすがにこの監督の面白いところ。
映像やアングルのセンスはこの作品でも光っている。茶目っ気から主役の少女にめまぐるしい早さで衣装の着せ替えをやらせている。ハリウッド五十年代映画でヒロインが着たような衣装を少し崩した感じで、これがなかなかいい。
トーマス・ヴィターベアの『ディア・ウエンディ』で少年たちが身につけた60年代のサイケデリックファッション(あきらかにジミヘンやジム・モリソンへのオマージュとして)をみたときと同じ驚きを覚えた。ちなみにかつてトーマス・ヴィターベアをインタビューしたとき、「ストイックな作品ではなくエンターテーメントも撮るかも」といっていたけれど、ディア・ウエンディはエッジのきいたエンターテーメントになっていたなあ。
で、『永遠の僕たち』だけれど、ラストの献辞として「デニス・ホッパーに捧ぐ」と出てハッとした。’10に亡くなった彼を偲んだものだが、主役をやったヘンリー・ホッパーは息子だ。映画はアメリカンニューシネマの第二世代に受けつがれているということを実感したしだい。
しかしガス・ヴァン・サントには『ジェリー』『誘う女』『エレファント』のような現代アメリカの実態をつくような作品をもう一度とってほしい。
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